ArcGISでサプライチェーンの可視化・分析
サプライチェーン全体の最適化を支援し、
2024年問題や脱炭素などの物流課題に取り組む
- 物流データの分析における地図機能が不足
- 地図表現の操作が煩雑
- 地図上での分析結果の表現力の強化
- 簡単な操作で多彩な分析を実現
課題
導入効果
概要
ロジスティード株式会社は、70 年以上の歴史がある総合物流会社で、国内外で広く展開する製造業や小売業の荷主に対して、物流業務を包括的に受託する 3PL を中心に、SCM(サプライチェーンマネジメント)を取り入れた物流業務全般のサービスを提供している。戦略的に海外拠点を増やし、2023 年 8 月時点で国内外に 808 の拠点を有する。グローバルに展開する企業のサプライチェーン戦略立案から実行まで総合的な支援を提供している。
DX 戦略本部 SC イノベーション部は、これまでの荷主への物流サービスで培ったオペレーションとサプライチェーン関連のデータ分析のノウハウを活用し、調達から生産、供給、販売まで、サプライチェーン全体の最適化を支援する新しいサービス「SCDOS」を 2020 年(令和 2 年)から開始している。SCDOS はサプライチェーンに関わるさまざまなデータ分析から浮かび上がる現状の課題、そして物流業界における環境問題や、2024 年問題、貿易業務の煩雑さなど、荷主が直面する課題への最適なサプライチェーン改善の提案からその実現、そして評価までをトータルでサ
ポートする。その中のサプライチェーンに関連するデータ分析において、荷主や倉庫、納品先の位置関係を地図上で視覚的に分かりやすく表示するために ArcGIS Pro を使用している。
課題
SCDOS のサプライチェーンデザインサービスの初工程であるサプライチェーンの可視化・分析では、物流の各分野で経験を積んだコンサルタントが、顧客が蓄積する需要データや物流のコスト構造、今後の計画といったさまざまな情報を収集・整理し、Microsoft Power BI(以下、Power BI)などのツールを用いて分析する。位置情報を持つデータに関しては、各担当者が Power BI のマップ機能や Google Maps を使用し、拠点の配置関係を表示していた。地図上にデータを表示することで顧客や配送先、物流拠点の位置関係を直感的に理解できるよう、該当の情報を提示する。
多角的な分析を進めるには、地図上に更なるデータを追加して表示する必要がある。しかしこれまでのツールでは、地図上にデータを表示する操作が煩雑で、複数のレイヤーを自由に組み合わせることが難しく、物流拠点から特定の時間内にアクセス可能な範囲を示す到達圏分析に制約が生じるといった課題が
存在していた。
ArcGIS 採用の理由
Microsoft 社と Esri 社の連携により Power BI 上で分析結果の可視化を地図上で行う際に、ArcGIS の背景地図や公開レイヤーを利用することができる。 Power BI での地図上の可視化・分析では、ArcGIS が利用されていることを知り、早速 ArcGIS Proの トライアル版で評価を開始した。
トライアルを通じて、ArcGIS Pro では地図上でのデータ表現機能が豊富であり、また操作も直感的であることを確認できた。さらに、ArcGIS Pro は国内外のデータを取り扱えるため、グローバルな分析にも対応できる点や、グローバルでのトップシェアを誇る点が評価ポイントとなった。加えて、ArcGIS のライセンス費用が比較的手頃であることも選定理由の一つとして挙げられた。
課題解決手法
サプライチェーンの分析においては、顧客の協力を得てサプライチェーンの工場や倉庫、配送先の拠点情報、輸送コストや今後の計画など、物流に関わる各種データを収集・加工し、それらを分析ツールに取り込む。その上で、分析・可視化を実施しながら、現状のサプライチェーン網を理解し、業界や荷主が抱える課題や将来の計画を踏まえて、最適な拠点配置や物流計画を策定する。
既存の物流拠点や取引先情報、物量・需要予測の結果を ArcGIS Pro に取り込む。色彩やポイントの形状などを工夫することで、視覚的にわかりやすいマップを作成することができる。その結果、単にデータやグラフだけでは捉えきれない位置関係の適切性や問題点を確認できた。加えて、Living Atlas で公開されている人口統計データやハザードデータなどを組み合わせることで、候補地の倉庫スタッフの集めやすさや自然災害のリスクといった、拠点選定における妥当性の評価も可能となった。
効果
ArcGIS Pro を導入し、物量や需要、必要に応じて需要の重心点など、地図上に表示させる複数レイヤーの表現方法を工夫することで、社内外から ArcGIS の表現力の高さと分析結果のわかりやすさに対する評価を受けた。さらに、ArcGIS Pro を使って物流拠点からの時間到達圏解析、拠点周辺のハザードマップ作成、また就労人口データのレイヤーを追加するなど、新しい視点での分析が可能であることを発見した。社内のメンバーからは ArcGIS Pro でこんな分析ができるんだ」との喜びの声を聞くことができた。
今後の展望
現在は、ArcGIS Pro を利用し、分析結果を地図上で可視化することをメインで行っているが、今後はさらに利用を広げることを検討している。特に商圏分析に特化した ArcGIS Business Analyst を使って、物流拠点周辺の就労人口の調査をさらに詳しく行うことや、自然災害のリアルタイムデータを活用することで現在起こっている災害による物流への影響の把握など、顧客のサプライチェーンの付加価値を高める情報の活用を検討している。また、グローバルに展開する顧客のサプライチェーン構築のさらなる支援に向けて、海外でも拠点の最適化を行うために必要なデータの収集や、各国の物流特性に合わせた分析法などの確立に取り組みたいと考えている。