今まで行わなかったファミリー層向けキャンペーンチラシの配布が新規顧客の獲得に

課題

  • 既存店舗の整理、統廃合

導入効果

  • 販売強化エリアを抽出し、今まで行っていなかったファミリー向けキャンペーンを行い、新規顧客の獲得に成功

概要

千葉トヨペットは千葉県全域で新車および中古車の販売、修理、自動車パーツ・アクセサリの販売を行っている。県内に、トヨタ新車販売店を51店舗、中古車販売店を8店舗持つ。
同社は、顧客データや自動車保有台数データ、各支店の営業テリトリーデータを重ねて分析し、店舗の統廃合、営業テリトリーの再配置、販売促進エリアの抽出等を行っている。分析結果から、以前はほとんど行わなかった若いファミリー層向けのキャンペーンを行い、新規顧客の獲得に成功した。

背景

千葉トヨペットがGISの業務への利用を開始したのは2014年である。前年の2013年に幕張メッセで行われたある展示会で社長自らGISを体験し、数社の中からJPSを選んだという。既存店舗の整理や統廃合、また営業テリトリーの状況把握や、テリトリーの適正化への利用を見据えての導入であった。
当初はGIS分析専門の部署は無く、業務改善室のメンバー2名が通常業務と並行して担当する形でスタートした。その後、JPSからGISのトレーニングを受け、2014年2月に市場調査グループを新設し、2名が専属の担当となった。現在は1名増え3名で業務を行っている。
Esri Business Analystを選んだ理由は、支店が51店舗と多く、また数十万件におよぶ顧客データを取り扱うには高機能なGISソフトウェアが必要と判断されたためである。

解析手法

市場調査グループで行っている分析は、顧客データのアドレスマッチングから顧客の地理的な分布を把握し、そこに自動車検査登録情報協会の大字別の自動車保有台数データを重ね合わせエリア毎の自社シェアを割り出すというものだ。その上にさらに各支店の営業テリトリーを重ね合わせていく。それらの結果を基に、市場があるのに売上げが振るわないなど、課題のあるエリアを見つけ出し、担当する店舗と相談しながら分析を行っていくのである。
各支店の管轄エリア(テリトリー)と実際の顧客の分布の間には多くの場合差異があり、顧客分布の重なりや飛び地など、本来の管轄を飛び越えて顧客と営業所が結びついている場合がある。地図上に可視化することでそれらが一目で分かるようになる。例えば、営業マンが一人退職した場合、残りの営業マンで担当できるのか、他支店へと振り替えた方が効率が良いのか、そのような変更をただ店長の勘だけでなく、役員がデータで判断するための資料となっている。
加えて、販促強化エリアの抽出や、テリトリー毎の市場調査レポートの作成、また店舗の統廃合のための基礎資料の作成などを行っている。

導入効果

あるエリアでは、世帯数は約2,000だが数百台程度しかシェアが無く、しかもそのエリアを担当する支店からは3台しか販売していなかった。分析をしてみると、そこは住宅街で5歳から10歳の子供が他のエリアに比べて圧倒的に多く、車はエスティマなどファミリーカーが目立ったのである。
千葉トヨペットの既存客は、全般的に高齢者が多く、高級車の購入が多かったため、販売促進のための各種キャンペーンは今までは既存客向けにしか行って来なかった。

新規顧客獲得のためのチラシの配布などは、今まで一度も行ってこなかったのである。
そこでまず折込チラシが可能かどうかそのエリアの新聞購読率を調査したが、あまり高くなかった。地域新聞をあたってみると該当エリアをほぼ100%カバーしていることが分かったので、子供向け「キッズメカニックイベント」の告知を行った。これは子供達が本物のつなぎを着てメカニックを体験するイベントである。すると新規で10人の申込みがあった。次に自作のチラシを営業マンが該当エリアに配布するとさらに10件程度の新規のコンタクトを得たのである。参加したのは実際にミニバンやファミリーカーのユーザーだったのである。
「会社の大方針としては、既存客を大事にし、買い替えを押さえていくというのが王道のビジネスのスタイルです。しかし新規の顧客が増えなければ利益は増えていきません」と笠井氏は言う。チラシの配布は千葉トヨペットとしては非常に新しい試みだったのである。

今後の展望

GISの分析から見えてきた課題に対する解決策が、そのまま現場レベルまで理解されているかというと難しい面もあるという。
例えば、あるエリアで4,000台の登録があってもその内の数百台は他県ナンバーであった。つまり新興住宅地で引越してきた人が多いのである。そういった人々は実は自分からディーラーを探して既にメンテナンスを受けていたりするのである。しかし営業マンは自分が販売していないお客様に対しての優先度が低いというのが実状だと言う。そのような新規のお客様を大切にすることで将来の購入につなげるといった気づきを市場調査グループから発信していきたいと笠井氏は言う。
将来的にはArcGIS Onlineから分析結果等を各支店へと配信したいと考えているが、それを実際の売上へと繋げていくにはGIS分析の有用性を各支店へ知らせていくことが必要と思われる。
自動車業界では、「どう売っていくか」という課題を解決するためにGISを使いこなしている例はまだあまり無いという。将来は、きめ細かく車種ごとに別々の販促をしたり、また道路の開発予定などを考慮した将来の街の発展に関する分析を元に、新しい場所に新しいスタイルでの出店ができたらと考えている。

図1 顧客分布の可視化
図1 顧客分布の可視化
シェアの可視化と販促強化エリアの抽出
図2 シェアの可視化と販促強化エリアの抽出

本社建物社屋について

千葉市稲毛海岸にある千葉トヨペット本社社屋は、明治32年に東京・日比谷公園前に建てられた旧日本勧業銀行本店の木造2階建ての建物であり、その後谷津遊園楽天府、千葉市役所庁舎と移築を繰り返したのち、昭和40年に現在の地に移築された。平成9年に有形文化財に登録された。
寺社建築に用いられる唐破風を持つ中央の玄関から、左右対称に長くのびる和風を基調とした外観に特徴がある。

本社およびショールーム (有形文化財)
図3 本社およびショールーム (有形文化財)