自然災害が多い日本でビジネスを継続させるためには、想定される災害リスクに対して事前に対策を講じることが不可欠です。
自社に関係のある施設や拠点の位置情報と災害シミュレーションデータとをGIS上で重ねることで、どこでどの規模の災害が起きたらどんな影響(被害)があり、また災害発生後に復旧に向けた計画といったビジネス継続のための事前プランニングに大きく役立ちます。
ArcGIS Online や防災・減災分析に特化した GIS サービス NADIAct で分析を行えば、クラウド上でデータが管理されているため、災害時でも情報の参照や共有が簡単に行なえます。
災害データと自社データを重ねる災害シミュレーション
自社拠点情報や従業員情報、サプライヤ情報等の自社データと災害に関するオープンデータ等を「位置情報」をキーにして統合することで、特定の災害が発生した際に自社が受ける可能性がある被害を想定することが発災前の事前災害シミュレーションになります。
例えば下の図では、自社拠点と首都直下型地震が起きた際の液状化被害想定を重ねたイメージになります。1枚のマップ上で可視化することで、拠点ごとの災害対策の判断材料として有益な情報になります。
さらには、各拠点に勤務している従業員の人数や通勤経路、部品や納品物の運搬経路、工場の生産能力等の属性情報を付加することで、運搬経路の変更に伴う部品の調達や製品流通の遅れ、部品不足や設備不良により生じる生産数の減少具合、管理職の被災から起こり得る意思決定の遅れなど、より具体的に自社の被害をシミュレーションすることができます。
このマップは、南海トラフ巨大地震の震度予測と支店の拠点を重ねたものです。
左上にあるアイコンをクリックすると、支店情報や地震の震度分布を確認できます。(別タブでマップを開く)
従業員の帰宅・出社困難度分析
内閣府中央防災会議の試算では、勤務先から自宅までの距離が 10 ㎞ を超えると帰宅困難になる確率が上がり、20 ㎞を超えると全員帰宅困難になります。帰宅困難度が高い従業員数を把握すると、事業所に用意する防災グッズなどの備蓄量を割り出すことができます。
帰宅困難な従業員の分析
下の図では、事業所の住所を元に、道路網を考慮した5km、10km、20kmの3つの距離圏を作成し、従業員の住所をポイントとして重ねています。就業時間内に発災した場合に、自宅までの距離が10kmを超える帰宅困難な従業員の人数を把握することできます。
出社可能な従業員の把握
就業時間外に発災した場合には、出社が困難な従業員の人数を素早く把握することに役立ちます。 従業員の属性情報を同時に管理することで、すぐに出社可能な従業員の所属部署や階級(経営層・管理職・一般職)を把握し、発災後の事業継続と業務指示に役立てることが可能になります。
災害発生後の被災・復旧状況の確認
災害発生後、対策本部では被害状況や応急対応の最新情報を確認し、迅速で適切な判断を行う必要があります。本部と各拠点が常に統一された地図とアプリで繋がっていることで、容易に情報を一元化することが出来ます。
状況の理解を促進
災害時に把握すべき情報は多様であり、分単位で変化します。そのような状況下では、報告があがってきた個別の情報から瞬時に状況を理解し判断を下すのは困難です。そこで、これらの情報を一つのプラットフォームに集約し、地図上に可視化することで状況の理解を促進し、意思決定をスピーディに行うことができます。下記のマップは地震発生後に自社店舗の営業状況を各店舗からリアルタイムに報告を受け、色分け表示したイメージです。全店舗のうち、赤い店舗は未だに現地からの状況報告が無く、“不明”状態としています。電気や通信機器が遮断されてしまっている可能性もあります。
報告情報の統一
情報を報告する際に、統一された項目で行われることで、集計や分析が簡単に行なえ、状況の把握や意思決定にすぐに役立てることができます。ArcGIS Onlineでは、スマートフォン・タブレットアプリで現地調査を行う際に、事前に調査項目を設定できるアプリ「Collector for ArcGIS」や「Survey123 for ArcGIS」を用意しています。
BCP対策を強力に支援するArcGIS Online
ArcGIS Onlineでは、BCPで利用する以下のサービスを提供しています。
- 南海トラフ地震や首都直下型地震の災害予測データ
- 保有する拠点情報、従業員情報を元にした可視化と分析
- 現地調査用アプリや状況把握のためのダッシュボードアプリ
- 震災初動対応や緊急被害判読などのマップ・アプリのテンプレート
- ユーザー管理機能