特に都心やその郊外の住宅地において、鉄道駅は最も人が多く集まる場所です。そのような場所で、スーパーマーケットなどの小売店を展開するときに駅からの人の流れを加味することは、ビジネスの成否に関わる重要な事項になります。

帰宅途中に購入されやすい立地

仕事帰りの帰宅時に、最寄駅から自宅への道中に 2 つのスーパーマーケットがある場合、どちらのスーパーマーケットに多く立ち寄るでしょうか。

 店舗1. 駅前のスーパー
 店舗2. 最寄駅から自宅の途中にあるスーパー

帰宅途中に購入されやすい立地

スーパーマーケットでは、食料品や飲料など、比較的重い荷物を購入することが多いため、上記のケースでは自宅付近にある「店舗 2」を選択される方が多いのではないでしょうか。この場合、「店舗 1」の商圏範囲は「店舗 2」までの狭い範囲となってしまいます。駅前に位置する店舗は、前面通行量も多く、商圏範囲も広いように見えますが、他店舗の影響により実際の商圏範囲は狭くなっているケースも存在します。
このように、ある店舗や立地から居住者を吸引できる商圏範囲を「後背地」と呼ぶことがあります。上記の例では、「店舗 1」の後背地は「店舗 2」までの範囲となり、「店舗 2」の後背地はそれ以降の範囲となります。

後背地の市場ポテンシャル把握

GIS を用いることで、最寄駅から帰宅する居住者がどのスーパーマーケットで買い物しやすいか以下のステップで分析することができます。

1.駅の勢力圏(駅勢圏)を推計
 町丁・字等やメッシュごとに、ArcGIS Network Analyst などを利用して、その中心点がどの駅に近いのか割り当てること
 で、各駅を利用すると想定されるエリア(勢力圏)を割り出します。エリアの作成時に「駅から徒歩15分圏より外側は含ま
 ない」など、閾値を設定することも可能です。

1.駅の勢力圏(駅勢圏)を推計

2.各小売店の後背地を推計
 駅の勢力圏内に存在するスーパーマーケットなどの小売店を地図上に展開します。
 小売店付近でバリアを設定し、1 と同様の分析を行うことで、各店舗の「後背地」を推計することができます。

2.各小売店の後背地を推計

3.各店舗の市場ポテンシャルを把握
 各店舗の後背地ごとに、人口や世帯数などの市場ポテンシャルを表す値を集計します。
 推計消費額データを利用することで、金額をベースにしたポテンシャルも把握できます。

通常の商圏分析では、居住者に対するポテンシャルを推計しますが、本手法を用いることで、新規出店時に駅から帰宅する人をどれだけ取り込めるかを事前にシミュレーションし、出店可否の判断材料の一つとして利用することができます。

 

流動人口データ(人流データ)の活用

近年、スマートフォンの GPS などから得られた位置情報を活用する取り組みが活発になってきています。ESRIジャパンでは、ブログウォッチャーが提供する「プロファイルパスポート」で保有するスマートフォンの位置情報データを加工した「歩行者混雑度データ」を提供しております。指定エリア内における歩行者の混雑度を地図上に視覚的に表示して分析することのできる本データを活用することで、理論上の分析ではなくリアルな動線分析を行うことができます。

流動人口データの活用

人流データ 一覧(GIS データストア)

 

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