本記事は、米国Esri社の「Halo Forecasting with AI: A Major Leap in Retail Planning」を翻訳したものです。

ここ数ヶ月の間に、世界でも有数の小売企業数社が、事業拡大計画にむけた新手法を試み始めている。単純な概念でありながらアプローチが革新的なこの新しいビジネスツールは、企業の長年のニーズに応えるものだ。
中核を成すのは、ある地域の潜在的市場から予測収益を計算する強力な予測エンジンだ。しかし、際立って特徴的なのは、チャネルの垣根を越えて分析する力だ。実店舗での商品販売とオンラインによる購入は、それぞれ独立した現象のように見えているが、このツールにより、お互いの関連性が明らかになる。
この手法はハロー予測(Halo Forecasting)と呼ばれ、人工知能と地理空間クラウドの力を組み合わせ、これまでの経営者の事業計画手法を変えるものである。
以下のストーリーマップは、その仕組みを説明したものだ。

ハロー予測:事業計画における大きな進歩
AI とロケーションインテリジェンスでビジネスインサイトが明らかに

ハロー予測:事業計画における大きな進歩

実店舗とオンライン上の双方で製品を販売する企業は、奇妙な現象に気付き始めている。それは、実店舗販売とWeb 販売は、今まで経営陣が想像していたようなパイの奪い合いにはなっていない、ということだ。長年の思い込みに反し、実店舗を構えることで同じ地域のオンライン販売の売り上げが減少することはなく、その逆の現象がしばしば起こる。実店舗が存在することで、周辺地域のオンライン販売が促進されるのだ。
「ハロー効果」として知られるこの現象に魅了された最先端の小売企業経営者の多くは、この効果の収益への影響を予測しようと試みたが、失敗に終わっていた。大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、ハロー効果により実店舗の売上が 20 〜 30% 増加する可能性があると見積もっている。だが、経営陣にとって全体平均としての情報では足りない。特定の地域の特定の店舗からどのくらいハロー効果による収入が見込めるのか、正確な予測が必要なのだ。
今では、人工知能、ビッグデータ分析、そしてロケーションインテリジェンスの革新的な融合により、企業はハロー効果による収益がどれくらいになりそうか、数値として把握できるようになりつつある。

ユニファイドコマースの先へ

我々がハロー予測へとたどり着く道の途中には、変化しつづける顧客の期待に応えられなかった企業があちこちに停滞している。ハロー予測への移行は、決して簡単ではないのだ。
デジタルトランスフォーメーション時代の初期には、企業は店舗ブランドを宣伝する Web サイトを作成するだけで十分だった。こうした Web サイトは、すぐに店内取引を補完するeコマース販売チャネルへと進化した。その後、オンラインショッピングを利用する消費者の数が増えるにつれ、企業は実店舗やオンラインストアをはじめとする販売チャネルを統合して、どこからでも同じ商品が購入できるようにした。これを「オムニチャネル」という。そこから、販売、マーケティング、そしてデータ管理を統括するクロスチャネル戦略である「ユニファイドコマース」へと飛躍するのは自然な流れだった。

ユニファイド予測へと導く進化
ユニファイド予測へと導く進化

今の最先端はユニファイド予測、またはハロー予測である。
ハロー予測では、位置データ、取引履歴、消費者情報、および人工知能という独自の組み合わせを使って店舗およびオンラインの売上を予測するだけでなく、一方が他方の売り上げにどのように影響するかも予測する。このツールを使用することで、経営陣は店舗の設置場所を計画し、新しい市場に打って出る際、仮定のシナリオを立てて検討することが可能になる。

競争優位に向けた予測

結果を予測する際に 1 人の人間が同時に考慮できる要因の数は、最大でも 11 だという。スプレッドシートを使えばさらに多くの事柄を管理できるが、ビッグデータを処理することまではできない。そこをハロー予測が引き継ぐのだ。ハロー予測プログラムは、クラウドコンピューティングと AI の学習機能を使い、店舗販売やデジタル販売を決定づける無数の要因同士の複雑な相互関係を分析することができる。
さまざまな種類のデータから、複雑な分析結果がそれぞれ得られる。最も重要な情報は次のとおりだ。

  • 既存市場における小売店の店頭販売とオンライン販売に関するデータ
  • 高度な人口統計データ(下図の例を参照のこと)
  • 出店予定地の位置と周辺に住む消費者の位置との間の複雑な空間的相関関係
ハロー予測に使用される人口統計学データのサンプル
ハロー予測に使用される人口統計学データのサンプル

ハロー予測は、GIS 機能を搭載した地理空間クラウド上で動く。最新の GIS 機能により、関係者なら誰もが欲しがる世界中の消費者関連の人口統計データにアクセスすることができる。また、設定したターゲットグループが実店舗と Web 上の双方で企業の売上にどれくらい寄与しているかも明らかにできる。
ハロー予測では、GIS の近接解析機能を使いこの分析を行う。

近接解析の重要性

ハロー予測は、出店候補地に店舗を構えた場合の売上を予測することから始まる。ここでは機械学習が中心的な役割を果たし、出店候補の各地域をモデル化する。次に GIS を使い、出店候補地と周辺エリアに住む見込み客のグループとの近接性を人口統計と支出習慣に基づいて測定する。
以下のデモでは、典型的なハロー予測を行い、具体的にどのように解析が行われるかを探っていく。

店頭販売

店頭販売

ここでは、ミネアポリス・セントポール都市圏での出店に向け、販売見込高の高い地域を特定していく。

店頭販売2

いくつかの地域での販売見込高をモデル化するため、まずはミネソタ州南部郊外のアップルバレーからスタートする。

店頭販売3

このエリアに出店した場合の潜在的価値を計算するには、その店舗と潜在的顧客との近接性を測定する必要がある。機械学習モデルがハロー予測を行うためには、この測定結果が欠かせない。

店頭販売4

GIS を使うと、消費者が店舗まで車で行く際にかかる現実的な時間が計算できる。また、ビッグデータを処理する予測ツールの機能を使い、徒歩や自転車で店まで行く際にかかる時間などの細かいデータも必要に応じて追加できる。

店頭販売5

これにより、周辺のどのエリアが店舗の売上に寄与しそうかという単純化されたマップが表示される。
だが、移動時間は、店で買い物をするかどうかの一要素にすぎない。重要なのは人口統計と、顧客のし好なのだ。

店頭販売6

ハロー予測は地理空間クラウド上で、地域の人口統計と消費者の購買嗜好を分析する。
これらの情報に基づき、出店した際の周辺地域単位の購入予想額を GIS を使って予測する。

ハロー予測の次のステップは、この初期分析を市場全体に拡大し、ミネアポリス ・セントポールエリアで高収益を見込めるいくつかの場所を経営陣に示すことだ。GIS テクノロジは AI の処理能力と地理空間クラウドを使い、アップルバレーだけでなく、その周辺地域の実店舗売上も予測する。この予測の精度は通常 90 パーセントを超える。
それでも、分析を行ったのは実店舗での売上の予測のみだ。競争優位性を追求する経営陣は、分析をさらに一歩進め、ハロー予測を完全なものにするために非常に重要なデジタル販売の分析にとりかかる。

オンライン販売

オンライン販売

ミネアポリス・セントポール都市圏は、多くの都市圏と同様、消費者がより密集している都市部を中心に、オンライン販売による多大な売り上げが見込まれている。

オンライン販売2

デジタル支出のパターンを予測するために、AI エンジンを使って同様の分析を行う。最新の GIS インテリジェンスを使用して、地域の顧客グループの支出習慣を解析し、信頼性の高いデジタル売上の予測を作成する。
GIS を使ったスマートマップで結果が表示される。緑色で表示されたエリアは、中心地に実店舗を設置した場合、ハロー効果で 140 万ドルを超えるデジタル売上が見込まれる地域だ。

店舗設置場所の選択

この新たな予測方法により、かつてないレベルの事業計画の見通しが可能になった。一言で言えば、一部の幹部しか把握できなかった販売チャネル全体を見渡せる力だ。
ハロー予測を使えば、店舗計画担当役員は不動産ブローカーと調整し、候補地の中から適格な区画を特定できる。GIS はこうした分析に何十年も使われている。

店舗設置場所の選択

ハロー予測が割り出した潜在的可能性のある地域に商業用区画地のフィルタリングを行うだけで、出店可能な候補地(濃い青色の箇所)をすぐに絞り込むことができる。
GIS を利用すれば、プランナーは適地選択に不可欠な他の要因も分析できる。今回は、交通量の多い交差点に近い場所という条件を加え、検索をさらに絞り込んだ。

詳細な消費者人口統計データや小売企業が所有するデータ、地理空間クラウドの力をハロー予測で組み合わせることで、経営陣は長年求めていた洞察力を得ることができる。
顧客の希望が次々に変化し、販売チャネルが急増するこの時代に、チャネル全体の事業成果を確信を持って予測することができれば、企業は揺るぎない競争力を得るだろう。
今世界で最も成功している企業の一部は、ロケーションインテリジェンス、AI、そして消費者インサイトという新しい組み合わせを使い、まさにそれをし始めているのだ。

活用事例ダウンロード