位置情報活用の屋内への広がり
スマートフォンやスマートウォッチなどの GPS 機能が標準搭載されたモバイル デバイスの登場により、屋外では誰もが位置情報を取得して利用することが当たり前の時代になりました。
一方で、GPS 信号は建物の中には届かないことが多いため、これまでは屋内で人やモノの位置を取得して GIS で活用することができませんでした。しかし、最近では地下鉄の駅や商業施設、工場のような屋内でも様々な仕組みを活用して位置を取得することができる屋内測位システムが登場しています。
これらの屋内測位システムも簡易なものであれば可視化、分析機能を備えているケースがありますが、ArcGIS にそれらの屋内測位システムで取得されたデータを取り込むことでさらに多様な可視化や複雑な分析を行い、以下のように活用することが可能です。
所在管理
工場やオフィスの中で人やモノを探すために時間がかかってしまったことがありませんか?人やモノの位置をリアルタイムに地図上に表示することができれば、瞬時に所在を把握することができ、これまで探すために費やしてきた時間を大幅に削減させることが可能です。特に敷地が広大な場合や、探す対象となる人・モノの数が多い場合は地図を活用した直感的な把握が非常に効果的です。
滞留状況の把握
リアルタイムな位置の把握だけでなく、蓄積したデータを可視化・分析することも可能です。
集めたデータの全てを単純に可視化しただけでは、複雑すぎてデータにどのような傾向があるかを把握することができません。そこで、ヒートマップによる可視化や、メッシュで区切った範囲内や特定のエリア別にデータ数を集計して塗り分けることで、どこに人やモノが滞留しているのかを直感的に把握することができます。また、グラフなどを併せて表示させることで、具体的な数値と共に状況を俯瞰できます。
これにより、工場等であれば生産の状況と照らし合わせて作業者の過不足が発生してる場所・工程を把握し、作業者数を調整したり、商業施設であれば顧客が滞留している箇所を把握することで接客するスタッフを増やしたりと、人員配置の適正化につなげることが可能です。また、オフィスなどであれば、利用率が低く有効活用されていない会議室を見つけ、保有する施設の有効活用に向けて検討することが可能になります。
また、空間的な傾向だけでなく時間的な傾向も加味した分析を行うことで、分析対象としている期間中、継続的に他の場所よりも統計的に有意に人やモノが滞留している場所や、最初は滞留していたけれど時間が経過していくにつれて滞留が解消されていった場所など、様々な傾向を見つけ出し、さらに深い洞察を得ることが可能になります。
最も濃い赤の部分は分析対象の期間中、他の場所よりも常に統計的有意にデータ数が多かった場所です。
反対に濃い青の部分は常に統計的に有意にデータ数が少なかった場所です。
移動量や移動軌跡の把握
GIS を活用することで、測位された単なる点のデータを線のデータに変換できます。これにより、移動軌跡を詳細に把握することができます。また、その線の長さを算出することで、実際にどれだけ人やモノが移動したかを具体的な数値で把握できます。
こうした可視化・分析を行うことで、例えば製造業や物流業では、ほとんど稼働していないフォークリフトや、逆に異常に移動距離が多く無駄が発生していると思われるフォークリフトを特定することが可能です。
さらに、線の密度を解析することで、点のデータの密度では把握しづらい実際の移動に近い形でヒートマップを作成でき、混雑するルートを特定できます。
屋内の地図が無くても問題ない
屋内空間においては地図が整備されていないケースがほとんどですが、その場合でも問題ありません。CADデータがあればそれを簡単にインポートすることができます。仮にデータが無くても図面が紙やPDFであれば画像としてインポートし、位置を合わせることで屋内の地図を作成可能です。多くの地図データベンダー様が地図データを作成するためにArcGISを活用しています。
プラットフォームとしての強み
ArcGISは位置情報活用のための GIS プラットフォームです。屋内測位システムが簡易な可視化・分析機能を提供しているケースはありますが、ArcGIS ほど豊富な可視化・解析機能を標準機能として提供している製品はありません。また、ArcGIS であれば単一のプラットフォーム上で屋外の位置情報の可視化・分析も行うことが可能です。自社や所属部署内の数多くの業務に汎用的且つ特別な開発なしで活用できるため、トータルコストを最小限に抑えることができます。
また、屋内の位置情報を活用する際、機密保持のためにクラウドの利用が難しいケースがあります。スタンドアロン、オンプレミスのサーバー、モバイルアプリまで揃っている ArcGIS プラットフォームであれば、あらゆるシステム要件に柔軟に対応可能です。
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