シェアサイクルステーション網の拡大
位置情報データを多面的に分析

    ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特徴

    • 大容量の位置情報をスムーズに共有・可視化できる
    • 既存クラウドツールとのデータ同期が容易である
    • マルチデバイスでのデータ可視化・分析ができる

      課題

    • 位置情報を持つデータの社内共有
    • 意思決定に役立つデータの柔軟性と鮮度の向上

      導入効果

    • 位置情報の社内共有の円滑化
    • データに基づく社内意思決定の深化
    • データ活用による商談の成約への貢献

    概要

    OpenStreet株式会社は、モビリティシェアサービスおよび IoT デバイスの開発、提供を行うスタートアップ企業である。同社は、自転車活用推進法の後押しやユニークな水平分業型の地域パートナーモデルにより、国内最大級のシェアサイクルプラットフォームである「HELLO CYCLING」を運営している。その他にも、シェアモビリティサービス「HELLO MOBILITY」、パーキングシェアサービス「BLUU Smart Parking」の展開などを通じて、ラストワンマイルにおける多様な移動手段を提供し、MaaS 促進を目指している。


    シェアサイクルステーション

    同社のデータサイエンス部では、「移動を変え、都市を変える」のコーポレートミッションのもと、「自由な移動をデータから創るチーム」を目指しモビリティ事業領域に係るデータを広く扱っている。シェアサイクル、シェアスクーター、小型 EV シェアの利用データをはじめ、マーケティング施策の効果測定、車両メンテナンス情報など、社内に溢れるデータのすべてが分析対象だ。社内でデータ活用の需要が高まる中で、シェアサイクルのステーション網を拡大するために、より最新のデータを柔軟に処理する必要があった。そこで ArcGIS Online を導入し、最新のデータを取り込み、社内で共有できる環境を構築した。データは直感的にスマートフォン上でも操作ができ、商談時の説明材料としても効率的に活用できた。

    課題

    同部は、シェアサイクルのステーション網を拡大するため、既存のシェアサイクルの位置情報の可視化や、可視化した画像を社内で共有する BI ツールを既に導入していた。しかし、地図上でデータを可視化する機能に特化しておらず、シェアサイクルの移動軌跡などデータ量の多いものや、処理負荷の大きいものを表示する際の動作が遅くなっていた。そのような大容量データを繰り返し使用する場合や画像を共有する際は業務効率が悪くなるため、改善が必要だった。

    さらに、データ活用においてより細かく分析するための「データの鮮度の高さ」および、収集したデータを扱いやすい形に加工するため「データの柔軟性」を求める声が社内で挙がっていた。

    ArcGIS 活用の経緯

    位置情報付きのデータをスピーディーに処理でき、社内での共有もスムーズに行える ArcGIS Online は、同チームがまさに必要としていたものであった。クラウド GIS である ArcGIS Online は、最新のデータが集約されている社内サーバーと連携する機能があるため、どこでも・誰でも最新のデータを可視化する環境を構築できる。また、ArcGIS Online はモバイルアプリ上でもストレスなく起動するため、商談時に可視化したデータを見せながら、お客様と会話ができる点も採用の理由となった。

    同社のデータサイエンス部長である山田氏は「印刷する場合を考慮して、背景地図を OpenStreetMap や地理院地図などにカスタマイズできることも嬉しいポイントです」と付け加える。


    社内サーバーと ArcGIS Online の連携図

    課題解決手法

    最新のデータの取得と更新

    同部は、まず ArcGIS Online のノートブック機能の一つである ArcGIS API for Python(以下、Python API)を使い外部から必要なデータを取り込み、データの解析処理を行った。Python API 上でマップの作成や更新ができるだけでなく、コードを数行つなぐだけで、決まった時間に解析処理を行うタスク設定も実現できた。

    その上で、同部はシェアサイクルのステーション設置場所の検討に必要な、昼・夜間人口データや地価データ、公園や学校情報などを国土数値情報や、政府統計の総合窓口「e-Stat」などから取得し、ArcGIS Online 上へデータのアップロードを行った。

    データ活用の柔軟性向上

    分析した結果は ArcGIS Dashboards 上で可視化した。シェアサイクルの利用の軌跡やステーションの配置を見ながら、売上順にデータを並び替えることや時間軸で表示を変えるなど、営業メンバーでも直感的に操作ができるため、必要に応じてデータの加工をすることが可能となった。

    また、スマートフォンアプリにインストールした ArcGIS Explorer からも ArcGIS Online 上のデータにアクセスできるため、外出先でもサービス利用状況を確認し新たなステーション設置候補のデータ確認ができるようになった。

    効果


    各シェアモビリティステーションの利用実績や
    人口等の基礎情報・周辺情報を、社員が誰でも
    一目で確認できるダッシュボードを構築

    ArcGIS Online の素早い処理機能により、容量が重いためにこれまで処理に時間がかかっていたさまざまな種類のデータの可視化と社内共有を簡単に行うことができた。ステーションの展開状況や走行軌跡のデータなどを誰もが閲覧できる環境を構築することを可能にしただけでなく、データチームの作業工数の削減にも大きく貢献した。従来は都度行っていたデータ取得作業や、レポート作成作業に充てる時間が短縮され、その分新しいデータの分析作業に充てることができた。

    さらに、商談時には地図上に可視化したデータを見せながらお客様と会話することができたため、シェアサイクルサービスの利用状況や、同社の有するデータの有用性についてお客様側の理解度もあがり、実際に契約につながった事例もある。

    ArcGIS Online 導入以降、ステーション数は 4,700 箇所から 5,600 箇所に増え、会員数も 180 万人を超えるサービスに成長している。(2022年(令和4年)11月現在)。

    2022 年 2 月には、ESRIジャパン主催のウェビナーにて同社の事例が紹介され、さらには、メンバーが対外的な情報発信サイト上で GIS データの活用について投稿した記事へ問い合わせがあり、社内だけでなく社外からの反響もあったという。

    今後の展望


    外出先からもさまざまなデータを
    確認することができると評判

    同部では、今後ビッグデータやリアルタイム解析処理でより迅速に意思決定をすることや、ネットワーク解析によるシェアサイクルの修理点検の効率化も視野に入れている。

    「これからも AWS (Amazon Web Services)など社内で使用しているツールと ArcGIS Online を連携し、さらにデータ活用の幅を広げていきたいと思っております」と氏は期待を込めて述べた。