店舗所在地と基幹データで読み解く地理的相関
国内 1,000 を超える店舗からの気づきの声

    ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特長

    ・経営情報を地理的に可視化し分析・共有できる情報活用プラットフォームを実現
    ・将来の海外店舗への展開も見据えたグローバルスタンダードな GIS 基盤を構築

      課題

    • 位置情報を軸として可視化した情報活用・共有プラットフォームがなかった

      導入効果

    • GIS 活用の裾野が広がり外出先でも閲覧可能に

     

    概要

    株式会社サイゼリヤは、人々の日常の暮らしに寄り添う理念のもと、社名と同名のイタリア料理店「サイゼリヤ」の出店を進めており、国内に 1,095 店舗、アジア太平洋を中心とする海外に 453 店舗の総計 1,548 店舗(2021 年 2 月末時点)ものチェーンストアを展開している。

    同社は、食材の調達から提供までの一連のプロセスを自ら手掛けるバーティカル・マーチャンダイジングで全体最適を行っており、各フェーズのデータは BI や統計システムなどで活用されてきた。しかし、位置情報を軸とした分析は専門部署での活用に留まっており、この度 ArcGIS を情報活用プラットフォームとして導入することで、いつでも、部門問わず、社内外どこにいてもデータを参照できる環境が整った。こうした取り組みは、かねてより経営が推進してきた「各部署の担当者がデータを見ながら行動する」という社内文化醸成の一助になっているという。

    課題

    食材をイタリアなどから調達、加工、物流、店舗での提供までと、各フェーズで発生するデータは基幹システムで管理し、全社データレイク/データウェアハウスへ集約している。集められたデータは BI を使ってグラフや数表の形で全社的に参照可能であり、商品軸、時間軸、グループ単位などで分析を行っている。また、データ解析等を専門とする部署では 2016 年(平成 28 年)より ArcGIS Business Analyst を利用して調査対象の分析を行ってきた。このようにデータの蓄積や活用を進めてきた同社だが、位置情報を軸としたデータの可視化や分析を全社的に共有する機能がなく、地理的な相関関係を見るためのデータ活用促進は難航していた。

    また、店舗を巡回する際に、出先でも店舗データを確認する必要があり、周辺店舗の位置、店舗属性、店舗担当者連絡先、店舗ごとの実験内容(メニュー開発等)など、その場で手軽に検索し閲覧したいという要望も上がっていた。

    システム概要図システム概要図

    ArcGIS 採用の理由

    「このような社内ニーズに迅速に取り組むため、自社業務に習熟しているが専門家ではない社員でも開発できるローコードやノーコードの GIS 開発環境を整備したかった」と語る情報システム部長の坪井氏。この点で ArcGIS は GIS そのものの基本機能の充実はもとより、機能拡張に対応するさまざまなインターフェースが準備されており、他システムとの連携が容易であるところが評価され選ばれた。データ互換性も良く、社外の共同研究機関と GIS データのやりとりやオープンデータの活用が容易に行えるのも良い点だ。

    また、将来の海外店舗への展開も見据えた GIS 基盤の構築を検討していたので、海外の地図情報にも対応している Esri 製品に魅力を感じた。

    課題解決手法

    今回のシステム導入を検討した 2020 年(令和 2 年)5 月は、社内における新型コロナウイルス感染症対策会議内でジョンズ・ホプキンス大学の感染状況ダッシュボードを参照しながら感染の広がりを確認する機会が増えていた時期であった。このことは図らずも社内で GIS への理解を早める追い風となり、機運の高まりに乗じて GIS システムを同年 11 月に導入した。運用面においては、業務が多岐にわたり相互に関係するシステムが多いため、データ連携などのシステム作りは自動化を基本としている。今回構築したシステムも、データウェアハウスに蓄積した会社全体のデータを ArcGIS Enterprise へ自動で取り込み、経営管理部門から店舗運営部門まであらゆる部門の社員が手間なく使えるように、あえて機能やデータを部門業務に特化させず、あらゆるデータを盛り込み分析できるようにした。具体的には、全店舗の売上、来客数、商品の出数傾向などを時間軸で期間設定し、過去比も出しながら店舗、エリア、販売形態などでフィルタリングして地理的相関を参照することを可能とした。

    導入効果

    会社全体に蓄積するデータを各部署の視点で地理的に可視化・分析できる環境を整えることにより、

    • 地図上で俯瞰的に店舗情報を閲覧でき、専門部署以外からの気づきも増えた。この結果、参照のみならず、同業他社の開業状況など地域情報も共有したいという声が現場から上がってきた。
    • スマートフォンで出先でも特定の店舗情報を迅速に検索でき、情報取得のスピードがアップした。
    • 気象・防災データをレイヤーで追加でき、物流部門の配送計画などにも役立てられている。
    • 地図利用が浸透したため同業他社出店アプリも追加で作製でき、周辺の同業他社との関係性などが見えてきた。
    • 柔軟な GIS 基盤により、圧倒的なデータ互換性で見たいデータを加えることも容易に行えた。

    フィールドで利用するスマホアプリ

    店舗施策情報と気象情報を重ねたダッシュボード

    今後の展望

    時代や環境の変化とともに変わり続ける顧客の要望は、社員が “見たい” と思うデータと重ね合わせることで顕在化してくる。従来把握できていなかった地理的要素を加味した傾向と気づきは、GIS 基盤の情報活用プラットフォームで即座に共有でき、各部門担当者の行動に繋がり始めている。今後は、海外店舗への展開をはじめ、AI や IoT を利用した店舗環境データなどの情報追加、食材の陸上・海上輸送など物流領域への拡大管理、コーポレートサステナビリティなど多方面への活用に期待が高まっている。