特定健康診査の未受診者の受診率が対前年同月比で最大170%向上。対前年の年間受診者数(2015年2月までの累計)も3万人を突破し5千人増

課題

  • 病気の早期発見・早期治療や健康の保持を促進するために、加入者並びに扶養者の未受診者に特定健康診査を受診させること

導入効果

  • GISを用いて自宅から近い健診会場を案内することで未受診者の受診者数の向上を実現

概要

全国健康保険協会は、中小企業等で働く従業員とその家族など、約3,600万人の加入者、170万事業所の事業主からなる日本最大の医療保険者である。同協会の役割は、地域の実情を踏まえた自主自立の運営を行い、都道府県単位で保険者機能を発揮することにある。そして、民間組織として業務改革を進めるとともに、サービスの質を向上させることによって、加入者・事業主の利益の実現を図ることである。同時に、被用者保険の受け皿として、世界に誇る日本の国民皆保険の一躍を担い、病気にかかったときにきちんと医療を受けられるよう、健康保険を安定的に運営するという公的な使命を担っている。
ここでは、同協会の加入者並びにその扶養者の健康状態を知るために、健診未受診者分布を見える化し、未受診者の密集地域に最適な健診場所を選定したことで受診者数が前年より向上した事例を紹介する。

背景

平成26年度にスタートしたデータヘルス計画に基づき、保険者は診療報酬明細書や健康診査の結果などの各種情報を活用し、加入者の健康づくりや疾病予防、重症化予防に取り組んでいる。その際に、計画策定のための各種情報の「見える化」が重要である。同協会兵庫支部では、データヘルス計画の効果的な実施と分析結果などの各種情報の「見える化」を目的に協会本部並びに各支部に先駆けて、被扶養者の特定健康診査(特定健診)の未受診者分析と、受診勧奨および加入者の医療機関受診行動分析についてGISを用いて実施した。今回ArcGISを採用した主な理由として、第1に実績豊富であること。第2に充実したサポート体制、第3に多様な機能から採用とした。

導入手法

1.データの抽出


図1 : データ抽出

本事業に必要となるデータ(健診未受診者データおよび健診機関データ)を本部基幹サーバーよりCSV形式で抽出した。(図1参照)

2.マッピング


図2:特定健診受診者・未受診者分布

協会けんぽ兵庫支部加入の被扶養者のうち、兵庫県内に居住する健診未受診者154,071人の住所情報および兵庫県内の健診実施機関所在地をGIS上にマッピングした。これにより健診未受診者が県内のどこに分布しているのかが視覚的に把握可能となった。(図2参照)

3.集計


図3:未受診者最多エリア分布図

GIS上に1kmメッシュ(1km×1km)を作成し、メッシュ内の未受診者数の集計を行い、未受診者の密集地域を割り出した。その上で契約健診機関と協議し、対象密集地の近くで健診ができる場所を選定し、無料集団健診業務と合わせ、未受診者の自宅近辺でかつ無料で健診が受診できることを再勧奨通知書により郵送した。(図3参照)

4.スパイダーグラフ


4:最寄り健診機関相関図

密集地以外の地域では、GIS機能によって未受診者の住所と健診機関所在地を紐づけることで、未受診者の自宅近郊の健診機関を割り出した。そのうえで、健診未受診者に自宅最寄りの健診機関にて健診が受けられることを郵送で案内し、受診行動を促した。(図4参照)

導入効果


3ヵ年の受診者数の比較

未受診者が多い密集地域の上位25ヶ所(1kmメッシュ内241名以上)を抽出し、未受診者が受診し易いように、最寄りの特定健診場所(公民館・文化ホール等)を選定した。
該当箇所での健診を周辺地域加入者に勧奨文書で案内したところ、多くの反響と問い合わせがあり、兵庫支部職員総出で対応した結果として、約1ヶ月半で新たに4,000件の受診券発行申請があった。

考察

GISの機能で未受診者の分布を視覚的に把握できるばかりではなく、1kmメッシュを用いることで数値的にも把握することが可能になった。
従来は経験知や勘に頼っていた健診会場の配置計画も、GISデータを用いることで、より効果的な計画策定が可能となった。例えば、都市部のみならず郊外の団地群などが未受診者の多い地域であることが明らかになり、より効果的な健診場所の配置を行うことができた。
また、健診場所周辺の環境や会場の知名度、立地等も受診行動に影響を与えることも明らかになった。
実際に多数の受診者が訪れた西宮市の会場で行ったアンケートでは、回答した95人中49名が今回受診した理由について「会場が近かったから」と回答しており、それぞれ密集地の地域特性に基づいた会場を選定したことで、多くの加入者の受診行動に繋げることができた。

今後


本事業の主担当である芦澤氏

今年度は対象者の住所のみを基にして健診会場を選定したが、今後は受診者の住所と健診会場を紐づけた分析や、健診会場で実施するアンケートから受診者の行動パターンを割り出し、より効果的な健診会場の選定による特定健診受診者数の向上を目指す予定だ。
また、医療費や健康状態の地域特性を正確に把握し、加入者の医療機関への受診行動に関するデータを分析することで、より実態に即した保健事業の提供を考えている。
二次医療圏別の加入者と医療機関への受診行動をGISで分析し、国が進めている地域医療構想に基づき、関係する団体との連携強化にも保険者としての役割を担っていく。