都市デザインの魅力的なプレゼンを可能にする 3D Web アプリ

    ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特長

    ・ArcGIS Online で 3D シーンを顧客に共有し、都市デザインの効果的な提案を実現
    ・顧客は提案されたデザインのすべての要素を Web アプリで閲覧可能

      課題

    • 顧客に都市デザインを提示する手法のデジタル化

      導入効果

    • 3D シーンを顧客に共有し、都市デザインの効果的な提案を実現

     

    概要

    GIS の技術は、都市計画や設計のプロセスにおいて一般的なツールであり、多くの場合、用地の選定や分析に使用される。これにより、プランナーやデザイナーは、その地域の地形、水文学、人口統計、政府規制などを理解し、プロジェクトの設計に反映させることができる。

    世界最大の建築・デザイン・プランニング会社であるゲンスラー社は、人々が住み、働き、遊ぶために魅力的な場所となる、ユニークで大規模な複合施設の都市コミュニティをデザインする。これらのコミュニティは、住民に相乗効果を生み出し、住み続けたいと感じてもらうための経済活動を提供するように設計されている。

    同社シティ & アーバンデザインチームは、計画の作成やシナリオの可視化、コラボレーションと意思決定の支援のために、GIS 技術の機能を探求している。

    課題

    建築事務所がデザインを可視化して顧客に提示する方法としては、パワーポイントによるプレゼンテーションや印刷された図面が長年使われてきた。しかし、これらの方法では残念ながら静的なイラストしか見ることができない。より魅力的で没入感のある体験を顧客に対して提供できるツールを備えた、ワークフローをデジタル化する新しい方法を模索していた。

    「都市計画とデザインは複雑なプロセスであり、意思決定を支援するためのデータ収集、分析、ビジュアライゼーションには多大な労力が必要です」と、同社ワシントン DC オフィスのシニアアーバンプランナー兼デザイナーのレ・アン氏は語る。

    課題解決手法

    同社はマスタープラン・コミュニティ(レクリエーション施設や商業施設が数多く設置された大規模な住宅地)に必要な設計と建設のプロセスを簡素化するために、3D GIS を採用した。

    「私たちは開発フレームワークの構築とテストのために、投機的な用地調査と実際の都市設計プロジェクトの両方を活用しています。これにより、実世界の GIS データを統合し、複数のシナリオに対応したプランやモデルを迅速に作成し、指標を評価して、潜在的な影響の空間分析を行うことができます」とアン氏は述べる。「ArcGIS CityEngine、Web シーン、そして ArcGIS StoryMaps などの ArcGIS Online アプリを使用することにより、対話的な 3D Web アプリを通じて、顧客や利害関係者にアイデアやデザインをより効果的に伝えることができます」。

    デザインプロセスの初期段階では、敷地とその周辺環境を深く理解する必要がある。「ArcGIS Pro を使ってデータを収集し、さまざまな分析を行います。ArcGIS CityEngine と ArcGIS Pro を使うことで、2D のデザインを詳細で大規模な 3D 都市モデルに素早く変換することができます」とアン氏は言う。「これらの 3D 都市モデルは ArcGIS Pro で入力した属性データをすべて含んだスマートなモデルです。CityEngine Web ビューアーには、3D Web シーン内のさまざまなデータレイヤーを操作するためのツールが用意されています。スライダー、スワイプ、横に並べて比較するツールと連動して、異なるレイヤーをオン / オフすることで、複数のデザインシナリオやプロジェクトフェーズを顧客に提示することができます。あらかじめ選択された異なる画像の間を移動することで、ビューアーはちょっとしたアニメーションを作成することができ、顧客に、より魅力的で没入感のある体験を提供することができます。また、ArcGIS CityEngine には、影や視界の分析ツールがあり、建物のデザインが周辺地域に与える実際の影響を想定することに役立ちます。さらに、ArcGIS Online を利用して、ArcGIS CityEngine から 3D Web シーンをエクスポートし、オンラインで公開することで、顧客やその他の関係者が閲覧できるようになります。これは、より良いコミュニケーションと、より多くの情報に基づいた意思決定を支援するのに役立ちます」。

    ゲンスラー社課題解決手法

    効果

    3D GIS の Web アプリを使用することで、顧客にとって対話的でより魅力的なプレゼンテーションが可能になった。また、顧客からのフィードバックに新しい情報や要望が含まれている場合、3D GIS を使用することで、デザインの反復やビジュアライゼーションが簡単に作成できるようになった。

    「3D と対話的な GIS 技術が急速に発展したおかげで、都市プランナーは、計画と設計のタスクを管理・調整するために、より統合的でダイナミックなアプローチを採用することができるようになり、これらのプロジェクトを建設する地域社会に貢献できるようになりました」とアン氏は述べる。

    3D GIS では、3D Web アプリのすべての要素がクリック可能であるため、ユーザーは提案されたデザインの詳細情報を見ることができる。承認された 3D モデルと関連するプランは、都市設計者から建築家にシームレスに引き渡すことができる。これにより、BIM 環境でデザインをさらに発展させることができる。

    BIM モデリングのデータは、プロジェクトを建設する建設会社に提供される。BIM には広範な施設・設備データが含まれており、建築設計・エンジニアリング、機械・電気・配管(MEP)アプリ、構造エンジニアリング、および建築施工に利用することができる。

    多くの自治体が GIS データのオープンデータポータルを運営しているため、区画、土地、土地利用、水域、道路、路線図、バス停などの交通データに関する高品質なデータを入手することができる。また、等高線、地形、水文学、断層などの環境データも収集できる。さらに、オープンデータポータルから、高さの属性を含む建物フットプリントを入手することもできる。

    ArcGIS CityEngine のプロシージャルモデリングツールを使用すると、建物フットプリントから何千もの 3D 建物モデルをすばやく生成し、デザインコンセプトを作成できる。

    「デザインには、既存の建築物や自然環境と技術を結びつけて、未来のコミュニティをより住みやすい空間にする力があると思います。デザイン部門では、GIS を利用することで、他の人には見えないものをよりよく理解し、見ることができるようになりました。つまり、コミュニティの外見の背後にあるものを評価・分析することです。GIS はデータを分析することで、コミュニティの仕組みをより深く理解することができるのです」とアン氏は語る。

    ゲンスラー社ArcGIS Pro でベースマップを作成し、既存の建物フットプリント、標高、都市計画、土地利用、交通ネットワークなどを含めることで、
    プロジェクトの背景を提示

     

    本稿は、2021 年 3 月の米国 Esri 社発表事例 「3D GIS Supports Decision-Making for Smart Urban Planning and Design」をもとに作成した