例えば、生鮮食品を取り扱うオーガニック食品スーパーが、 横浜市内でデリバリーサービスを始めるとします。新鮮な食材を効率よく消費者に届けるため、VRP(配車ルート解析)を用いた配達ルートの最適化を行います。

配達条件

配達拠点として、「店舗:2」「配送センター:2」「倉庫:1」、合わせて5 拠点からの配達を検討しています。以下の条件で、最適なルートを回れるようにします。

  • 配達先:285 件
  • 勤務時間:8 時間
  • 休憩時間:11 時 ~ 14 時の間の 60 分
  • 受取時間:各顧客ごとに設定
  • ドライバーの時給:1,500 円
  • ガソリン代: 115 円/L

上記では ArcGIS で実行できる VRP の条件の一部のみを利用しています。上記以外にも、各拠点の発着可能時間、積載できる荷物の上限、荷物の積み下ろしに必要な時間など、さまざまな条件を加味した上で最適なルートを構築できます。

配達条件

 

配送シミュレーションの実施

Case1: 現状の拠点から配達

各拠点から 1 台ずつ配車したところ、時間内にすべての顧客に荷物を届けられないことが分かりました。トラックを多めに登録することで必要な台数をシミュレーションできます。その結果、各拠点から 2 台ずつ、合計 10 台のトラックを配車することで時間内に配達できることが分かりました。

Case1: 現状の拠点から配達

Case2: 配送拠点を変更した場合

店舗 B は配送センターから近いため、新規開店した店舗 C からの配送を検討することにしました。
シミュレーションの結果、店舗 C を配送拠点とすることで、285 件の顧客を同じ条件で 9 台のトラックで回ることが可能なことが分かりました。また、運転時間は約 6 時間、走行距離は約 20km 削減できることが分かりました。

Case2: 配送拠点を変更した場合

Case3: 配送拠点の調整を行った場合

Case3 では、倉庫からの配達を多くした場合のシミュレーションを行いました。倉庫から配達することができれば、各店舗の作業負荷を減らすことができます。倉庫から 5 台のトラックを配送する条件にしたところ、他の店舗からは 1 台ずつ、合計 9 台のトラックで配送できることが分かりました。また、運転時間および走行距離も多少ですが Case2 よりも減少します。

最適な配送ルート構築のために

Case1 と Case3 を比較した結果、トラックの走行距離に加えて、ドライバーの労働時間も削減することが可能となりました。総コストを比較すると、約 20% 削減できていることが分かります。

最適な配送ルート構築のために

このようなシミュレーションを実施することで、配送拠点やそこに配置する配送トラックの台数を最適化し、必要なコストを大幅に削減することができ、経営の効率化に結び付けることができるようになります。2024年4月からトラックドライバーの労働時間に上限規制が適用されることで起こる諸問題、いわゆる「2024年問題」の対策として、配送効率化に取り組むことは、労働時間の削減につながる一助となりうるものです。

 

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