企業のブランド戦略に「ビッグデータ分析+地理空間情報」を活用
課題
- ツイート内容と地理空間情報を組み合わせ、企業のブランド戦略や課題解決に活用したい
成果
- ツイートパターンの特徴や人口統計学的な顧客の特性をマップ上に表示することで、地域的な特徴を可視化
- ツイートから顧客の特徴を推察し、ターゲットとなる顧客の分析が可能に
- 製品に関する苦情の広がりをマップ上に可視化することで、迅速な対応が可能に
ソーシャルメディアを見える化
ツイートした内容が読まれること。それはTwitter利用者にとって多少なりとも気になることではないだろうか。今、Twitterというビッグデータに埋もれた人々の言葉を分析するためのナレッジを蓄積する取り組みが進められている。最近では、Esriの地理空間情報を扱う技術とIBMの言語と心理学の分析手法を組合わせてツイート内容を解読する研究が始められている。
私たちの周りはデータで溢れている。日々膨張するデータをコントロールできなければ人類の発展に大きな脅威となる、と多くのITリーダたちが警鐘を鳴らす。膨張するデータ、すなわちビッグデータの管理には、その内容を分析し可視化するための新たな技術が求められている。
ビッグデータへの対応としてEsriでは、昨年、ArcGISにビッグデータのワークフローを統合。さらに、GitHub上で GIS Tools for Hadoop を含むいくつものオープンソースプロジェクトを立ち上げ、正式にビッグデータの世界に進出した。
ブランドをモニタリング
ソーシャルメディアは 、ビッグデータの定義とされるデータ量(Volume)、多様性(Varaiety)、速度(Velocity)、正確さ(Veracity)という4つの特徴を備える。一日に5億回以上のツイートと35億回の「いいね!」からなるこのソーシャルメディアは、データ量が多くかつノイズの多いデータの典型といえる。ノイズを取り除いたツイートは、購買者心理を表す価値あるデータとしての可能性を秘める。
Esriは、ビッグデータの分析と調査を実施している最先端の施設であるIBM Research Almaden’s Accelerated Discovery Lab と共同で、ツイート内容と地理空間テクノロジーを利用して企業のブランド管理を行う「ソーシャルモニターマップ」を構築した。ツイートの分析をし、顧客のニーズを把握しようというプロジェクトだ。IBM Accelerated Discovery Labでは、ソーシャルメディア分析を始めるにあたり、1日あたりのTwitterコンテンツの10%にアクセスすることができるライセンスを取得した。
ツイートから顧客の特徴を分析
特定のアパレルメーカーに関する顧客のツイートをすべてを分析し、モニタリングすることは可能だろうか。EsriとIBMのプロジェクトチームはこの問いに答えるべく、全米に展開するアパレルメーカー8社をソーシャルモニターマップのモデル企業として、複数の視点から8社に関するツイートの分析を行った。
Esriから参加した開発者は Portal for ArcGIS や ArcGIS for Server を活用し、位置情報と時間ごとの Twitter ユーザのデータを可視化。インタラクティブなマップアプリケーションを作成し、ツイートパターンの特徴や人口統計学的な顧客の特性をマップ上に表示できるようにした。また、IBMのソーシャルメディア分析では、ツイート内容、位置情報、心理言語学的な特性を解読し、地域毎の各アパレルメーカーへのイメージの評価を行った。
ツイートには含まれない性別や性格の特徴といったTwitter利用者に関する情報は、IBM Accelerated Discovery Labのアルゴリズムにより推測され、マップの下に表示された。アパレルメーカー8社へのツイートのマップは、プルダウンメニューから選択可能で、各企業のツイート内容や顧客の特徴を簡単に比較することができる。顧客の内在する特徴を表すデータを個人レベルで抽出できるので、CRMツールとしての利用も可能だ。
ツイートの見える化で迅速な対応
リアルタイム情報を提供するソーシャルメディアの分析が、突発的に発生した課題の解決とブランド管理に力を発揮した例がある。ある時、あるモデル企業の製品に関する苦情のツイートが集中したことがあった。ツイートをソーシャルモニターマップに表示してみると、その製品に関する顧客の反応が地理的にどのように分布しているかがわかる。予想通り、その製品に関るツイートが特定のエリアで増加していた。
「GISは問題の大きさを特定することに役立つ」とIBM Accelerated Discovery Lab の研究スタッフでデータ統合のエキスパートであるメアリー・ロス氏は言う。「IBMの分析手法と地理情報を組み合わせることで、ツイートの混乱がどこで発生しているのかを迅速に把握することができる。マップを活用することで、混乱の発端となった地域の特定や、混乱の広がり具合、例えば、混乱はロードアイランドに端を発したものだが、全国的というよりはむしろ地域的な広がりでしかない、といったことを視覚的に理解することができるのだ。このような情報は迅速な対応を促し、ブランド管理と課題解決に費やすコストの削減につながる。」
ソーシャルモニターマップは、ツイートから抽出した情報を可視化するシンプルかつ効果的な方法だ。ツイートデータを分析していくことで、顧客の性格や購買層をより理解することができる。そこから得た情報を活用することにより、企業はブランドイメージをつくり、突発的な課題に迅速に対応することができるのだ。