我々が近代化を遂げた要因の一つとしてサプライチェーンの管理が挙げられます。もし現代において、物やサービスの流れを管理するツールを持たなかったら、プロセスが存在しなかったらどうでしょうか。または、遠隔地にいる専門家の持つ技術やリソースを活用する手段がなかったらどうでしょうか。その場合、我々はまだ完全に自給自足の生活を送っていることでしょう。
もちろん、シンプルな生活を送ることに空想を抱くこともありますが、直ぐに生活に必要な物が手に入る今の楽な生活を捨てることは困難です。さらに現状の生活を捨てれば、農業経験の無い私の家族は餓死してしまうでしょう。
昨今において、グローバルな物の流れは、世界中にあるコンピューター間のやり取りに頼っています。日々、ソフトウェアやコンピューターによって数十億ドル相当の国家間貿易がコントロールされています。家畜、携帯電話、コーヒー豆などの商品は、農場そして生産工場から、トラック、列車、船などのあらゆる輸送手段を使ってお店まで送り届けられますが、我々の生命は世界規模で網の目の様に繋がったサプライチェーンのタイムリーでスムーズな運用と管理に今後も委ねられて行くことでしょう。

ロジスティックセンターによるグローバルサプライチェーンの管理
ロジスティックセンターによるグローバルサプライチェーンの管理

グローバル経済はサプライチェーンを中心として回っています。 特に製造と小売セクターにとってサプライチェーンは非常に重要で、アメリカ国内においては、当セクターにおけるビジネスは GDP の 18% をも占めています。我々が所有するものは全てサプライチェーンを経由しており、過程において障害があれば我々の生活に影響を及ぼすことになります。

港はすぐ近くに

サプライチェーンマネジメントの役割を理解することは非常に重要です。特に物流分野においては、インフラの場所を把握しておくことでサプライチェーンの質を向上することが可能です。コンテナポートの様な物流拠点は、サプライチェーンの中核を担っていおり、米国における主要コンテナポートの内 2 つは、南カリフォルニアのロングビーチ港とロサンゼルス港です。
殆どのアジア圏からの輸入品はこれらの港に着き積荷から降ろされ、米国内サプライチェーンに入ってきます。 年間約 14 百万ものコンテナが経由しており、実際に約 40% もの輸入品はロングビーチ港とロサンゼルス港から届けられています。よって、これらの港は地域のハブとしてだけでなく国全体において重要なものとなるため、なんらかの障害があれば地域だけでなく国全体の経済と国民の生活に影響を及ぼします。

グローバルサプライチェーンの地域への影響とは

ロングビーチ港は 3 万もの仕事をロングビーチ市に生み出し、南カリフォルニア港においては 31 万もの仕事を生み出しており、地域にとっても非常な重要な拠点となっています。その中でも、州南部にある、リバーサイド市やサンバーナディーノ市を中心として構成される都市圏(通称:インランド・エンパイア)においては、物流産業が経済成長の原動力となっています。75% もの輸入品は一旦港からインランド・エンパイアで集積されており、トラックドライバー、在庫管理者、倉庫作業員などのあらゆる仕事が生み出されています。

14百万ものコンテナが通過するロングビーチ港とロサンゼルス港
14百万ものコンテナが通過するロングビーチ港とロサンゼルス港

小売革命

インランド・エンパイアのサプライチェーンが発達している要因には地理が大きく関わっています。2 つの主要国際空港と数千マイルに及ぶ一道路と高速道路、そして鉄道線路があり、港から 60 マイル先の内陸に輸送する際には高い輸送費が掛かりますが、それはリバーサイド郡とサンバーナディーノ郡の安い賃貸と労働費で相殺することができます。
そして、ロサンゼルス市やオレンジ郡に比べ土地が安いため、倉庫や配送センターなどの巨大施設や、Amazon, Best Buy といったオンライン流通企業、 Home Depot, Nestle, Nike, Nordstrom、そして Sumsung といった企業が拠点を構えています。 これらの拠点の中でも、Sketchers は約 2 百万スクエアフィートにわたりフットボール場 3 個分に匹敵する流通拠点を構えています。

約2百万スクエアフィートもの敷地面積がある Sketchers の流通拠点
約2百万スクエアフィートもの敷地面積がある Sketchers の流通拠点

サプライチェーン機能以外には、e-コマースといったビジネスのように、店舗とオンラインストアを両立させたビジネスモデルの先駆的な特徴も持ち合わせています。そして、倉庫拠点や FC 通信業における配送拠点の拡大にともなって、輸入量も増加を続けています。 多くの商品は数日ほど倉庫に保管された後、問屋や小売店や直接顧客に届けられており、もはや倉庫は単なる商品の集積施設ではありません。

持続可能なサプライチェーンの管理

経済にとってサプライチェーンを管理することはとても重要ですが、配送物の量と様々なリスク(天候、自然災害、政治など)などにより、効率的なサプライチェーンを保つには、複雑で膨大な量のデータを分析する必要があります。我々の脳はパターンを認識するように訓練され進化をしているため、複雑なデータであっても適切な方法で可視化をすれば、直感的に把握することができるようになります。そのため、地図は複雑なシナリオを共有伝達するのに強力かつ効果的なツールとなります。

米国 Esri 社は産学界におけるエキスパートと連携し、南カリフォルニアのサプライチェーンマネジメントにおけるニーズやポテンシャル、おして GIS を使った効率的なサプライチェーンネットワークついての研究を行っています GIS をサプライチェーンに活用することで渋滞や天候予測情報と合わせて商品やコンテナの位置をリアルタイムにトラッキングし、リソース活用の最大化を行い、円滑にサプライチェーンを運用することができるようになります。

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