スマートフォンとの接続により G-SHOCK は新たな表現へ

課題

  • 腕時計で取得した位置と時刻情報を 3D マップで表現

導入効果

  • 地図による表現が重要なコンテンツに。今後発売のモデルにも採用予定

概要

G-SHOCK「GPW-2000(グラビティマスター)」は、Bluetooth によりスマートフォンとリンクする機能を持つ。連携は「G-SHOCK Connected」というアプリを介するが、そのアプリには位置情報と時刻情報を管理する機能があり、自分が行った場所の履歴を 2D および 3D のアニメーションによりトレースすることができる。その背景地図および 3D データを Esri が提供している。

課題

GPW-2000 グラビティマスター
GPW-2000 グラビティマスター

G-SHOCK は今から 35 年前の 1983 年、それまでの常識を破る耐衝撃性に優れた腕時計として開発・発売された。その後、防水や防塵、防泥などさまざまな機能が強化され、「タフ」で「壊れない」、さらにその「独創的なデザイン」により世界中で大ヒットとなった腕時計である。
一方、G-SHOCK のもう一つの目標は「絶対精度の追求」、つまり時間の正確性である。正確な時刻を取得する手段としては既に標準電波受信と GPS 衛星電波の受信機能により実現されていたが、2017 年 5 月に発売されたモデル「GPW-2000(グラビティマスター)」は第 3 の手段として、Bluetooth によるモバイルリンク機能を搭載した。このモデルはパイロットの使用を想定して開発されたモデルなのであるが、時差やサマータイムなどの時刻ルールは国の政策や政治情勢により変更されている可能性がある。そのため、それらの情報をスマートフォンから獲得し補正するのである。
GPW-2000 とスマートフォンの連携は「G-SHOCK Connected」というアプリを介して行われる。アプリと連携することは、時刻合わせ以外の機能を備えることも可能にした。その一つが「フライトログ機能」である。
出発地や帰還地などにおいて時計のボタンを押すと、位置情報と時刻情報が記録され、フライトログとしてアプリ上で管理することができるのである。

フライトログ機能
フライトログ機能
グルーピング画面
グルーピング画面

地図上にプロットされた各位置のデータは、単独でも閲覧できるが、グルーピングすることで移動履歴を一連の流れでトレースすることが可能である。履歴は地図とリストで確認できるのはもちろん、3D マップ上でアニメーション表示することができ、まるで空を飛んでいるかのような演出で、自らの移動履歴を追うことができるのである。
これらの地図表現を実現するために選ばれたのが Esri だった。2D の背景図だけでなく、3D 表現のためのデータも ArcGIS Online より Esri が提供している。

採用の理由

データの採用に関しては数社の比較が行われた。採用の決め手となったのはグローバルデータであり世界中をカバーしていること、データ更新の心配が無いこと、そしてなんといっても標高データが整っていることだった。

課題解決手法

2D の地図を 3D 化して G-SHOCK らしい見せ方をする、という構想は最初から奥山氏の中にあったと言う。
コンシューマー製品への採用となると GIS 的な分析より、演出の素材としてどのように見せるかという点が重要になってくる。さまざまな地図アプリを触ってアイデアや表現を深めていったという。
実際の開発は開発会社に技術的な部分を担ってもらい、社内のデザインセンターのアプリデザイナーが G-SHOCK の世界観に合ったデザインにまとめていくという形で進めていった。
開発には約 1 年かかったが大きな問題もなくスムーズに進んだという。

効果

GPW-2000 は世界最大の時計の見本市であるバーゼルワールドに出品された。このモデルは海外でも発売されており、アプリも OS の言語に合わせて使用できる(12 言語に対応)。
「バーゼルに出展以来ずっと話題の商品となっています」と奥山氏は語る。

出発地から到着地までのフライトを 3D アニメーションで表現
出発地から到着地までのフライトを 3D アニメーションで表現

今回作成された 3D マップの評判は非常に良いという。それに伴い、このような地図による表現は CASIO にとっての一つの重要なコンテンツになってきており、今後の核になりつつあるという。
「CASIO にとって、時計は経験値がありますが、アプリは新しい世界です。今後も新しいアイデアをきちっとコンテンツ化していきたい」と奥山氏は語る。

今後の展望

Bluetooth 搭載機種は G-SHOCK に限らず今後増えていく予定であり、実際これから発売が予定されている製品にも、アプリと接続し地図を使った表現を行うことが決まっているそうである。
奥山氏は、このプロジェクトを始めるまで正直 Esri や ArcGIS のことは知らなかったそうである。「BtoC 企業の GIS 活用の方向として、アプリ向けの地図やデータの新しい見せ方とかを提案するといいのではないでしょうか。そして、その時はぜひ使わせてください。」と笑顔で言っていただいた。