ビッグデータの社会的利用

コロプラの所有する位置データを個人の特定を不可能に処理してから行動を分析。今まで見えなかった「人の移動」が見えてきた。

 

コロプラおでかけ研究所について

コロプラおでかけ研究所について

スマートフォンや携帯端末の位置情報を利用したゲームの元祖と言える「コロニーな生活」をはじめ、さまざまな「位置ゲー」を開発・運営するのが株式会社コロプラである。日本最大の位置情報サービスプラットフォームであり、約300万人のユーザから得られる位置登録数は月間4,500万回におよぶ。

コロプラおでかけ研究所は、コロプラが保持する膨大な位置データを、自社サービスの向上への使用だけにとどまらず、付加価値を与えたうえで分析・レポートという形で外部へ発信するリサーチセンターである。移動情報を社会に役立てる事を第一に移動情報の研究を行っている。

※数字はすべて2012年9月末 時点の数字

コロプラ社が保有する位置登録情報

複数の位置登録ゲームのユーザから得られる位置登録情報は、一定度以上の抽象化を行い個人の特定を不可能にしてから使用されている。

以下はデータの特徴である。

  • データ利用可能期間は、2010年1月から現在まで
  • 電車、飛行機、自動車など、交通手段に関わらず、ユーザの移動情報を取得
  • 位置情報から本拠地、勤務地を95%以上の精度で推定が可能(特許出願中)
  • 1km以上の人の移動について高いパフォーマンスを発揮
  • アンケートデータを活用した最新の属性比率をもとにウエイトバック対応も可能

自治体向けサービス

保有する膨大な位置データを活用していかに社会貢献できるか。最初は手探りでの模索だったが、現在行っているデータ利用のひとつに自治体向けの観光に関するレポーティングサービスがある。

近年自分で宿や飛行機などのチケットをとる個人旅行者が増加している。個人旅行者の周遊エリアや立ち寄り場所、宿泊場所や好まれる旅の傾向など、以前のようなパック旅行では簡単に把握できた顧客ニーズの把握が難しくなってきているという状況があった。コロプラのデータには旅をしながら登録された位置情報が多数ある。これらデータから個人旅行者の動きを分析し新たなニーズを見つけ出すことが可能かもしれない。

個人旅行者の行動範囲

コロプラの保有する位置情報から、北海道における旅行者の日中の行動の分析を行った。以下は札幌エリアにおいて、一泊した場合と連泊した場合の旅行者の行動範囲の比較である(南関東を居住地とし夏に札幌を訪れた旅行者)。札幌一泊の場合、札幌市と千歳市での位置登録が総回数の約70%を占めており、旅行者の行動範は非常に狭い。一方連泊した場合をみると、小樽や旭川での位置登録回数が2倍以上に増え、行動範囲が北東へと広がり近郊の都市へと足を延ばしていることがうかがえる。国内の他の地域では連泊数が多いほど行動範囲が狭まるエリアもあり、札幌エリア旅行者の特徴的な行動特性と言える。

また六甲山周辺の来訪者の行動について分析したものが以下である。一般の観光客は六甲山および南側市街地を中心に行動しているのに対し、ハイキング目的の来訪者は六甲山北側を含めた広範囲なエリアを行動していることが分かる。

札幌に1泊した人の行動範囲
札幌に1泊した人の行動範囲
札幌に連泊した人の行動範囲
札幌に連泊した人の行動範囲
六甲山観光客の行動範囲
六甲山観光客の行動範囲
六甲山ハイカーの行動範囲
六甲山ハイカーの行動範囲

六甲山ハイカーの行動範囲

このような旅行者の行動分析を2012年夏のじゃらんリサーチセンター主催による観光振興セミナーで発表したところ、多くの自治体から分析の依頼があった。今では複数の自治体に無償レポーティングサービスを行い、新たな観光スポットの発掘、誘客のヒントの発見の手助けを行っている。

エリアマーケティングでの利用

新宿駅のおでかけ商圏
新宿駅のおでかけ商圏

一方、位置データのエリアマーケティングへの利用も模索されている。以下は、2012年4月から6月の3ヶ月間で、新宿駅を利用したコロプラユーザの本拠地を可視化したものである。新宿から100km以内のエリアを対象範囲としている。色が濃いほどユーザの本拠地の密集度が高いことを示している。

新宿駅のおでかけ商圏様々な場所を訪れた人々の本拠地を算出できるため、ショッピング施設、不動産、遊戯施設等を利用(購入)する人がいる可能性が高いエリアを抽出でき、広告プランニングほか、様々な利用用途が考えられる。なお、主要30スポットのおでかけ商圏データはBusiness Analystに無償でバンドルされており、新宿駅のおでかけ商圏については、より詳細なデータが付属している。

今後について

コロプラの持つ位置情報を用いて人の動きをわかりやすく可視化することで、多くの自治体から面白い、有益であるという評価をいただいている。今後ともこの最大級の位置情報を社会貢献へと役立てていきたい。またエリアマーケティングの分野においても、今まで見えなかったよりリアルな商圏、移動データを可視化できたことによって、マーケティングの分野も牽引することができたらと考えている。