リユース業界最大手企業における出店候補地分析の効率化手法とそのメリットとは

    ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特長

    ・クラウド GIS 上に店舗、統計データ等を統合
    ・高度な機能、簡単な操作性の商圏分析ダッシュボードアプリを構築
    ・全国の開発マンが場所、時間を問わず出店候補地の商圏分析が可能に

      課題

    • 新規出店候補物件の商圏情報抽出業務が属人化
    • GIS 管理者がデータ活用、分析をするための時間が不足
    • 複数のツール利用によるコスト面、操作面の負担

      導入効果

    • 開発マンも商圏情報抽出が実行可能となり、円滑な業務フローを確立
    • GIS 管理者がデータ活用、分析を行うための時間を確保
    • 運用の効率化と維持コストの削減・組織のデータ活用基盤を整備

     

    概要

    株式会社ゲオホールディングスは、愛知県名古屋市に本社を置き、レンタル事業と中古品売買事業を中心に展開している。業態としては、レンタルを中心とした「ゲオ」、衣料や家電家具の中古品売買の「セカンドストリート」、携帯電話の中古品売買の「ゲオモバイル」が中心となっている。全国約 1,950 店(2021 年 9 月時点)のリアル店舗を中心とした事業を展開している。

    店舗開発部は、全国の店舗の出退店に関わる物件を探すことが主な業務である。開発業務課は、物件を探す開発マンのサポートを、統計情報などのデータの提供やバックオフィス業務を通じて実施している。

    昨今、従来からの業態に加え、ラグジュアリーブランドを扱うショップや、オフプライスショップなどの新規事業が増えており、開発マンの経験に頼らない、データ活用の必要性が部内で高まっていた。そのための分析サポートを行う開発業務課の作業時間を確保する必要があった。

    また、多数の新規出店候補物件の商圏情報の抽出業務が GIS 管理者 1 名に属人化しているという課題も抱えていた。これらの課題を解決するために、次期 GIS の検討を開始した。情報収集の末、ArcGIS を 2021 年度に導入し、商圏情報の抽出業務を、GIS 管理者だけでなく、開発マン自らが実行できる基盤を整備した。

    課題

    同社では、全業態合わせて毎年約 100 件のペースで新規出店している。以前利用していた GIS の運用では、GIS 管理者 1 名に対して、開発マンから年間 600 件の出店候補物件の商圏情報の抽出依頼があり、1 件辺りの作業時間は約 90 分かかっていた。

    そのため、新規事業のための分析サポートに充てる業務時間が無いという大きな課題があった。

    また、GIS 管理者不在時には業務がストップし、出店スピードが遅れ、その結果他社に物件を取られてしまうというリスクも抱えていた。他にも、以前利用していた GIS に加え、既存店の実績データを地図上で確認するツールも同時に運用していたが、先述の GIS と画面を行き来して確認する必要があった。

    2 つのツールの維持費用も掛かっていたため、ツールの運用的にも、コスト的にも非効率な状況だった。

    株式会社ゲオホールディングスシステム構成イメージ図

    ArcGIS 採用の理由

    次期 GIS に関して情報収集していた中、ESRI ジャパン主催の商圏分析をテーマとしたウェビナーを視聴した。ウェビナーで紹介された ArcGIS のダッシュボードアプリを見て、見やすくて使いやすそうという印象を受け、より詳細な情報交換をするために営業担当とのコンタクトを開始した。

    ESRI ジャパンとの商談を進めていく中で、ArcGIS が前述の課題を解決するツールだと確信し、導入に至った。同社は、特に以下 3 点が ArcGIS 採用に至った大きな要因と考えている。

    株式会社ゲオホールディングス
    開発マンによる商圏分析ダッシュボードアプリ利用の様子

    1. 操作面
    ArcGIS の Web アプリは、簡単に操作できるため、多忙な開発マンにも受け入れられた点

    2. 機能面
    以前利用していた商圏情報抽出用 GIS と店舗実績確認用の地図ツールの、別々の 2 つのツールで運用していた機能を、ArcGIS の Web アプリに 1 本化できた点

    3. 費用面
    ArcGIS Online のアカウントを開発マンに付与しても、従来の運用よりもコストが削減できた点

    課題解決手法

    ESRI ジャパンとの商談を進める上で、課題や GIS の機能要件を事前にリストアップし要件リストとしてまとめて、打ち合わせ時に活用した。

    要件リストをベースに、以前利用していた商圏情報抽出用 GIS と店舗実績確認用の地図ツールの 2 つのツールの機能やデータ要件を、ArcGIS でどう実装していくか定義し、商圏分析ダッシュボードアプリを構築した。導入支援には、ESRI ジャパンのコンサルティングサービスを利用した。

    商圏分析ダッシュボードアプリの実装は、プログラミング無しで構築が可能な ArcGIS Web AppBuilder を採用し、短期間でのアプリカスタマイズに対応した。

    商圏分析ダッシュボードアプリ上には、候補物件、既存店、会員、統計データを統合し、グラフや数値で配置し、地図と合わせて直感的に商圏情報を把握できるよう設定した。

    ダッシュボードアプリ上で有望な物件と判断した出店候補地は、ArcGIS Business Analyst Web App のインフォグラフィックス機能から商圏の詳細なレポートを PDF で出力し、開発マンが現地調査に向かう。現地ではインフォグラフィックスを閲覧し、現地で確認する情報と合わせて調査を行っている。

    また、出店稟議にかける際の参考資料にもインフォグラフィックスを利用している。

    効果

    株式会社ゲオホールディングス
    商圏分析ダッシュボードアプリ (ArcGIS Web AppBuilder)

    以前は候補物件 1 件辺りに約 90 分かかっていた商圏データ抽出業務が、ArcGIS 導入により 30-40 分で実施できるようになった(約 60% 削減)。GIS 管理者に集中していた業務を開発マンも実施することで、業務負荷の分散や待ち時間を解消した。

    店舗開発部門長は、「ArcGIS の導入により、データ分析のスタートラインに立つことができた」と評価する。

    コスト面では、以前利用していた 2 つのツールを ArcGIS に 1 本化したことにより、毎年のランニング費用を約 50% 削減することに成功した。

    また以前は、有望と判断されない候補物件の調査も GIS 管理者に依頼していたが、開発マン自らが気軽にダッシュボードアプリ上で商圏情報の確認、選別が行えるようになり、その分有望な物件の調査に割く時間と件数が増えたという。

    また、開発部門の現場責任者からは、「今後、開発マン自らデータを見て考える力をつけてもらいたい」とのコメントがあった。

    実際に通常業務での利用の他にも商圏分析ダッシュボードアプリから抽出したデータを使って、出店起案資料を独自にアレンジする開発マンも出てきている。

    今後の展望

    株式会社ゲオホールディングス
    商圏レポート(インフォグラフィックス)

    同社では、新規事業を中心に、お客様に喜ばれる場所に出店をしていきたいと考えており、その分析に ArcGIS を活用したいと考えている。

    また、成熟期にある事業では、どの既存店舗を残すことがお客様と同社にとって最適かといった、店舗の統廃合の分析にも活用が見込まれる。

    分析した結果のデータを個人に留めることなく、開発マンに積極的に共有することで、現場で培った経験に加え、知識レベルの底上げにもつなげていきたいと考えている。