1 日がかりの処理業務が 1~3 時間へ短縮高精度な成果物作成も実現

      課題

    • 熱画像の収集と解像度の向上
    • 顧客への成果物を強化

      導入効果

    • 従来の半分の時間かつ圧倒的な精度で顧客に成果物を納品

     

    概要

    カナダのトロントに拠点を置く ACCESSiFLY 社は、ドローンを用いた建物の状態調査のサービスを建物の耐久性や効率を科学的に分析する企業や建設・土木企業に提供している。このサービスにより顧客は、建物の性能の最適化、新築・既存の建物の耐久性の向上、損壊防止などをサポートすることができる。

    同社は調査サービスの一環である熱赤外データの収集プロセスを改善するため、ドローンで撮影した画像から解析した画像を効率的に作成するためのデスクトップアプリを導入した。

    課題

    同社の顧客への主な納品物は、建物の構造や潜在的な問題を調査した結果を詳細にまとめたレポートとその説明を行うことである。社長であり、メンテナンスプログラムの責任者であるクリス・ゴーチンスキー氏は、スタッフは基本的に構造物のすべてを診断し、詳細に説明し、表示することに努めていると言う。

    フリアーシステムズ社の熱赤外カメラを搭載した RPAS(遠隔操縦航空機システム)を使ってドローン検査を行い、潜在的な問題点や非効率性を発見するのもそのひとつだ。ACCESSiFLY 社は、熱赤外データを含む建物とその周辺を検査するワークフローを開発していた。

    ここで課題となったのが、熱赤外カメラは、極端な気温でカメラセンサーが不具合を起こすと構造物のパターンや形状の認識ができないことだ。つまり、2D オルソモザイクや 3D メッシュを生成しようとしても、RPAS からの画像をもとに共通の構造物を同定し、正確な位置と結びつけることができないのだ。「私たちがこの課題に取り組んだのは、基本的に精度を重視した納品物を求めているからです。我々は何かを分析・診断し、どこに障害があるのかを判断することに努めています」と氏は語る。

    また、2D マップや 3D シーンビューに表示する、2D および 3D の GIS データを生成する際に、ビューアーの上に熱画像を表示すると、画像が浮いたり、歪んだりしてしまう。 チームは顧客への成果物を向上させるために、熱画像の収集と解像度を向上させる新しいソリューションを模索していた。

    ArcGIS 活用の経緯

    同社は既に複数の Esri 製品を使用していたが、それらを継続して使用しながら課題を解決できる方法を米国 Esri 社と一緒に検討した。最終的にチームが選んだのは、ドローンで撮影した画像を 2D および 3D の GIS データに変換するデスクトップアプリ「ArcGIS Drone2Map」だった。価格の安さに加えて、その高度な機能が決め手となった。

    氏によると、5 人のチームはすでに ArcGIS Pro を使用しており、チームメンバーは放射線測定、多空間画像、および熱画像を分析することができたため、彼らは ArcGIS Drone2Map と ArcGIS Pro の両方を統合した新しいソリューションを開発することになった。

    課題解決手法

    ドローンは同じルートを何度でも飛行できるため、チームは同地点で撮影した熱画像と光学データの Exif タグ(画像フォーマットの一種)を ArcGIS Drone2Map で比較することで、熱画像データを正確に位置合わせする方法を考えた。しかし、熱赤外カメラは構造物の形状を認識するわけではなく、放射量とエネルギーの放出量を認識するのみである。形状認識の精度を高めるには、気温によるカメラセンサーの精度を最大限に維持する必要があると考え、チームは寒冷地ではジェルを、温暖地ではドライアイスを挿入するハウジングユニットを作成し、カメラに装着してデータ精度の向上を試みた。

    ArcGIS Drone2Map は、ArcGIS Pro を含む同社の既存ソフトウェアと完全に統合されており、他のアプリを併用することができる。また、Esri ユーザーである氏は、ArcGIS Drone2Map が慣れ親しんだインターフェイスであることや、チームが既存の Esri プラットフォームと一緒に使用できることで、統一性が向上することを喜んだ。

    ACCESSiFLY熱画像のDrone2Mapでの表示

    効果

    同社はワークフローの効率化や画像の鮮明化など、さまざまな効果を実感している。この新しいソリューションの大きな利点は、ワークフローの迅速化とデータ精度の向上だ。これにより、比類ない精度かつ半分の時間で顧客に成果物を納品できるようになった。これは会社にとっても顧客にとってもコスト削減につながる。
    「同じ 500 枚の画像を使った場合、既存のソフトウェアパッケージのベンチマークと比較して、3 時間も処理速度が速くなったのですから驚きです。500 枚の画像から 42 分間で 1 つのエラーもなく 3D データが出力されたのを見たときには、言葉を失いました」と氏は言う。

    氏は、ArcGIS Drone2Map から出力されるデータが非常に正確なのは、GIS が組み込まれているからであり、それはデータの正確さに信頼性と妥当性があることを意味すると言う。

    また、現場での全体的なプロセスが合理化されたが、特にオフィスでのバックエンド処理が重要だと付け加える。機械学習アルゴリズムの導入により、現場からオフィスに戻って後処理をするまでの時間が大幅に短縮された。以前は複数のソフトウェアを使って生成しなければならなかったドローンの飛行経路、2D と 3D のモザイク、多空間データなどを、1 つのアプリで取り込み、処理することができるようになったので、通常 1 日かけて行っていた調査が、1~3 時間で済むようになった。現場からオフィスを経て顧客に戻すまでに 1.5 営業日かかっていた赤外線サーモグラフィの納品データも、今では 1 日 8 時間の作業時間が短縮され、顧客に迅速に納品できるようになった。
    「以前使用していたソフトウェアでは、非常に高速なコンピューターで何時間も処理させても、半分も出てこないことがありました。今では、処理に失敗することはありません。精度の向上は驚異的です」と氏は言う。

    さらに、ArcGIS Drone2Map によって、データの編集や調整が容易になり、作業時間が短縮された。変更があればすぐに表示され、再処理や出力の必要がないため、チームはダイナミックな環境で仕事ができる。

    ArcGIS Drone2Map を使って情報を抽出し、赤外線カメラで撮影できる GCP(地上基準点)を配置することで、地上に再投影することができる。

    また、ドローンで収集した画像の品質も格段に向上し、現場での画像収集もより簡単になった。「赤外線画像を ArcGIS Drone2Map に追加する際に GCP を配置しないと、赤外線カメラの GPS の精度はあまり良くありません。GCP の有無は重要な差です。同じヘリコプターで撮影した 2 つの画像を並べるには、地面に何かを置いてソフトウェア上で位置を合わせる必要がありました」。

    顧客からのフィードバックはとてもポジティブなものだった。氏は、「顧客にとっては大きな意味があります。『赤外線データや他の光学データなどを含むシンプルなモデルを作成し、サーマルエクステリアで熱画像を見たときに、その場所が正確にわかります』と言うと、顧客はとても喜んでくれます。非常に助かります」と語る。

    ACCESSiFLY熱画像シーンレイヤー

    今後の展望

    同社は今後も ArcGIS Drone2Map を活用して、顧客に優れた成果物を提供していきたいと考えている。

    「ArcGIS Drone2Map は非常に信頼性が高く、顧客が必要に応じてデータを表示したり操作したりできるダッシュボードなどのカスタマイズした製品を展開することができます」と氏は語る。「私たちは、モデリング、プランニング、コラボレーションに大きな違いを感じています。また、画像、レポート、計画、提言、行動など、複雑な成果物の作成を可能にしてくれます。フリアーシステムズ社のハードウェアと完璧に連携し、想定されていることをすべて実行してくれる完璧なソフトウェアです」。

    ACCESSiFLY熱画像シーンレイヤー

     

    本稿は、2020 年 6 月の米国 Esri 社発表事例 「Drone-Based Building Sciences Firm Enhances Thermal Infrared Data with Desktop App」をもとに作成した